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独り暮らしをはじめて早二ヶ月くらい経った頃。

自炊ばかりの毎日を過ごすあまりに、私は三頭火のようなトロ肉がのっかているどこかジャンキーなラーメンを無性にたべたくなっていた。

しかし残念ながら、そのようなメニューのあるラーメン屋が近所にはなかった。

その禁断症状が限界となっていた私は、大学のA室と呼ばれる憩いの場の片隅にあった

iMacを使って午前中から一人黙々と検索していた。

チャーシューが豊富な店はたくさんヒットするものの、やはりトロ肉っぽいものは全くみあたらない。

しばらくの間、ブラウン管と睨めっこしていたのだが、ふとした瞬間、集中力が途切れた。

と同時に真後ろに気配を感じた。

振り向くとトシだった。

「エツ、なに調べてるの?」



ラーメン屋001



「実は今、山頭火みたいなトロ肉乗っかってるラーメンを欲していて。でも、全然それっぽいのがないんだよねー」

「そうなんだ。う~ん。そういえばさぁ…エツが気に入るかはわからないんだけど」

「なにか心当たりがあるの?!」

「俺は山頭火食べたことないからわからないんだけど、すごく柔らかい角煮が乗ったラーメンなら紹介できるよ」

「うーん。角煮がたべたいわけじゃないんだけどね。ちなみにそれ、どんくらい柔らかいの?」

「けっこー、いや凄く柔らかい。おすすめするよ」

「そうねー全然みつからんし、トシがそこまでいうなら…わかった妥協するわ。おトシ様連れてって」

こうして、急遽、昼に2人でラーメンを食べにいくこととなった。

そのラーメン屋は少し遠くまで移動しなければならないが、背に腹は変えられない。

というかこの時点で、久しぶりの外食ということと、友達になったばかりのトシと交流する機会が持てたこと自体が楽しみとなっていた。



夏のはじまりの快晴。日差しが照りつける。

そんな中を2人で国道沿いを自転車で走れば、そこはもうラーメン屋。

期待に胸を踊らせながら私は戸を開いた。

ひと運動後の冷房の効いた店内が心地いい。

席に着いてメニューを眺めるとラーメン以外のものも豊富であった。

私は悩む間もなくトシの勧めるがまま角煮ラーメンに決めた。

トシは今日はラーメンの気分ではないといって定食もの注文した。

果たして、その角煮は私の欲求を満たしてくれるのだろうか?

待ち遠しい。

私たちは店内の隅にあった本棚から料理対決漫画の元祖「包丁人 味平」を選んで席へ運んだ。

それを読んで料理が運ばれてくるのを待つことにしたのだ。

その漫画の大袈裟な表現のくだらなさと勢いに2人はニヤニヤした。



そんな感じで和んでいるときだった。

箸立ての裏あたりでなにやら移動するが私の視界の端っこに入ったように感じた。

そこに視線を移動させて確認すると、それは割と大きな一匹の虫だった。



ラーメン屋002





私の地元ではみかけない昆虫であった。

「トシ、これって…もしかして?」

「あっ。うん。茶羽根だね」

「チャバネってなに?」

「ゴキブリだよ」

「やっぱそうか俺、はじめて見たわ」

「そうなんだ」

トシはそのまま漫画をニヤニヤ読み続けている。

微動だにしない。

トシの反応を少し疑いながら、私も暫く放置してみることにした。

しかし、さすがに気になるので漫画ごしにさりげなく目で追っていた。

すると警戒心なくしはじめたゴキブリはテーブルの上をちょこまか移動しはじめた。

トシの顔に視線を移してみると、やはり全くといっていいほど気にしていない様子。

ゴキブリってこんなもんなんだろうか?

私の反応が大袈裟なのだろうか?

トシの対応が正しいのだろうか?

今まで私が持っていたゴキブリに対する常識が崩れたような感覚になった。

もう一度いうが、私はこの時、人生ではじめて実物の動くゴキブリを目にしたのだ。

ひょっとすると私の持つ勝手な固定概念が間違っているのかもしれない。

そうも考えてみたが、生理的に受け付けないものはやはりダメなのである。

トシの対応がどんどん不信に感じたので、私は意を決してお願いしてみた。



「トシ!こいつどうにかしてくんない」

「あっ。うん」

トシが相槌をうって、漫画を手から放した。

すると素早く両手を伸ばして、優しく上手にゴキブリを素手で捕まえてみせた。

そしてそれを手のひらにのせた。

ゴキブリはトシの手の甲や手首をちょろちょろ走り回った。

トシは穏やかな表情を浮かべている。



ラーメン003





そうなるとナウシカがキツネリスとじゃれあっているかのようにも見える。

いや、そんなわけはない。

やっぱりなんか違うと感じたので、次はこのようにお願いしてみた。



「トシぃ。そうじゃなくて、ティッシュ使うとかして、どうにかしてくれない?」

「あ。うん」

トシはまた相槌を打つと、今度はティッシュに手を伸ばした。

ゴキブリを左手に器用に誘導させると、その右手を使って、それをティッシュの中へと丁寧にくるっと包みこんだ。

そして、それをしなやかな手つきでテーブル上にあった灰皿にふわっと軽やかに乗っけてみせた。

丸まったテッシュがモゾモゾと動いている。

薄いティッシュに透けて、黒いものがもがいているのがみえた。

いやいやこれは、絶対違うと感じたので、とうとう私はひきつった表情になって言い放ってやった。



「これって意味なくね?そうじゃなくてさ、ゴキを殺すなりして、どっかやってくんない?!今からここで飯を食うんだよ!」

「あ。うん…」



トシは小さく頷くと丸めたティッシを両手で優しく掴みあげると、しぶしぶ店の外へと向かった。

リリースしたのだ。

その後ろ姿はどこか寂しげだった。

そして店内に戻ってきて、一言。

「自然に帰っていったっけ」

彼の顔はどこか恍惚としていた。



トシは虫一匹殺生しない、命を大切にする素晴らしき道徳心の持ち主だな。これは現代のガンジー&マザーテレサだと目をキラキラさせて思うわけもなかったが、私の中でトシに対する畏敬の念が生まれはじめていたような気がする。

そういえば、後にも先にもゴキブリを素手で触れる特殊能力を持つ人間には、トシ以外に出会ってはいない。トシってやっぱり凄いお人。





話は元に戻るが、結局この店の角煮ラーメンは私の欲求を満たすことはなかったが、もうトロ肉などどうでもよくなっていた。

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